メタボリックシンドローム  


代謝症候群ともよばれる、血糖値や血圧がやや高く、おなかが出てきた人の事を指す新しい概念である「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症
候群)」の診断基準ができてから暫く経ちましたが、残念ながら一般には、まだまだ
認知度が低いといえそうですが、ここで大切なことは普段なら見落とされがちな生活習慣病や動脈硬化症に陥り
そうな"異常のレベル"をより早く見つけることが可能となってきたということです。そのための基準がメタボリック
シンドロームということなのです。

ところでまずメタボリックシンドローム、これを理解するために大切な生活習慣病という名前は、1996年(平成8年)に当時の厚生省がそれま
で成人病と呼んでいた病気の多くを、40台過ぎの中高年からは誰にでも起こりがちな、加齢による老化現象として起こってくる、歳をとったら
やむをえない病気だとの認識では・・・いささか誤解されそうだとの立場から、実は加齢による老化現象ばかりでなく、若い時代から知らず知ら
ず継続してきている個人個人の健康上あまり良くない生活習慣による影響が大きな原因であるという事を一層解りやすくするためにつけた名
前で、アメリカはもとよりフランスにも生活習慣病という概念が導入されており、ドイツでは文明病、スウェーデンでは裕福病という名称が用いら
れています。
我が国では今までは成人病対策として、病気を早期発見して早期に治療する(二次予防)に力が注がれてきましたが、今後は更に一歩進ん
で、健康的な生活習慣を確立することにより、病気の発症そのものを予防する(一次予防)の考え方が重要視されるようになってきたわけであ
ります。
例えば今は健康であっても、高脂血症になりやすい体質をもっている人が高脂血症を起こしやすい食事を取り続けたら、二重に病気が進行し
てしまうので、早くそういう体質を見つけて防ごうということです。

ところでわが国の寿命の驚異的なのびの足元を引っ張る原因は自殺者の増加やインフルエンザの流行などもその一因ではありますが、最大
の要因の一つが現代ではこの生活習慣病であると言われています。また死亡原因では実に男性の56.98%、女性の55.20%が3大生活
習慣病(癌、心疾患、脳血管疾患)で占められています。
従ってどの病気が生活習慣病かを分類するといった事にはあまり意味はなく、さまざまな病気を生活習慣病と云う観点から捕らえる事が基本と
なるわけです。従って我が国での死亡の3大原因である1位の悪性新生物の多く・・いわゆる・・がん、をはじめ2位3位の虚血性心疾患、いわ
ゆる・・狭心症、心筋梗塞や、脳血管疾患、いわゆる・・脳出血、脳梗塞、脳血栓、等の脳卒中、などを始めとする中高年から罹患しやすい多
種多様の皆さんに良く知られている病気の発症は、大なり小なりこの日常の生活習慣に深いかかわりがあるとされています。

その生活習慣病のうち、死亡原因の1位の悪性新生物(ガン)は少し毛色が別としても、循環器病に分類される、2位の心筋梗塞や、3位の脳
卒中等はもちろんの事、多くの生活習慣病と呼ばれる病気の発症原因としてかかわりを持つ、もっとも重大な要因の一つが動脈硬化と呼ばれ
る現象であります。

動脈硬化とは血管の内壁にコレステロール等がたまったり、血管の細胞が増殖したりして、血管が弾力性を失い、硬くもろくなるとともに、血管
壁が厚くなり、内腔が狭くなった状態をいいます。このような動脈硬化が進むと、身体にとって大変重要な酸素や栄養を運ぶ血液が、血管が破
れたり、詰まったりすることにより体の隅々の組織まで酸素や栄養を運べ無くなってしまいます。従ってこの動脈硬化を上手に予防したり進行を
遅らせたりする事ができれば、かなりの点で更に元気で長生きにつながる事になると云うわけです。そしてこの恐ろしい不可逆的変化である動
脈硬化を引き起こしやすい状態に陥らすのがメタボリックシンドロームということなのです。

そこでこの恐ろしい動脈硬化を発生させる要因にはどういうものがあるかということですが、加齢による老化現象は誰もが避けて通れぬ要因で
ありこれは別として、よく知られている事に次の4つ、即ち高血圧、高脂血症、高血糖、肥満、があり、肥満は平成14年の国民栄養調査による
と男性では30〜69歳の約3割が肥満で、女性では60歳以上の肥満が最も多く約3割に上るといわれます。この五十年間で糖尿病患者は五
十倍に増えたほか、動脈硬化予備軍は2000万人に上るとされ、厚生労働省の調査では、40〜74歳でメタボリックシンドロームかその予備
軍の人は推計約1960万人。男性では二人に一人、女性の五人に一人が該当し、国民の間に広がっていることが分かってきました。生活習
慣病は社会問題化しており、「日本人の健康寿命を延ばしていくためにも、総合的な生活習慣病対策が急務」となってきています。このため、
新たな予防の考え方として取り入れられたのが・・・
メタボリックシンドロームなのです。

今更申すまでもないことですが、私達の身体は水分、脂肪、たんぱく質、ミネラル、糖質、などの成分から成り立っています。このうちたんぱく
質、ミネラル、糖質の量はそれほど変化はしないのですが、脂肪の量には変動があり、体重が増えたり減ったりするのは、主にこの脂肪の変
動によるものなのです。従って医学的にはただ単に外見上の太った状態を指すのではなく、体全体に占める脂肪の割合(体脂肪率)が高くなり
すぎた状態を肥満と言っているわけです。そして肥満を放置すれば、糖代謝異常、高血圧、HDLコレステロールの低下、中性脂肪(トリグリセラ
イド)の
増加、等をきたしメタボリックシンドロームを発症させる訳です。
従ってメタボリックシンドロームは、生命を脅かすような危険が次の日起きるわけではなく十年、二十年後を見越した上で治療をしているのです
と説明しているのですが、多くはその自覚症状が乏しいので、皆さんなかなか理解されてないことが多いのです。これを改めるには、運動、食
事を含めたライフスタイルの改善が一番大事なことになるわけで、メタボリックシンドロームというのは、ひとつの栄養学のテーマでもあります。

ところで昨今は、その太り方の違いによって、生活習慣病の合併症の起こり方が違うことがわかってきました。そのなかで心筋梗塞や脳梗塞な
ど動脈硬化によって起きる病気は、もっぱらコレステロールや中性脂肪が問題にされてきました。ところが糖尿病、高脂血症、高血圧も皆、人
体のエネルギー代謝と関係してお互いに絡み合っているので、複数の危険因子が重なっている状態が問題だということが、ここ二十年ぐらい
の研究で分かってきたわけです。血圧・血糖・脂質が僅かちょっと異常の境界域だったとしても、それらが二つ三つと重なると、血管に不可逆
的変化である動脈硬化が促進し心筋梗塞や脳梗塞などの危険性が高まりやすくなるのです。
しかし、その治療も、今までは、糖尿病が悪い、コレステロールが悪いなどと、それぞれ個別に診療や指導をしてきた傾向にあり、早期のリスク
が集積して、それが動脈硬化につながるということがなかなか理解されていない点が問題でした。一つ一つの病気を治療していくばかりなく、も
っと根本にある内臓脂肪を減らすのが先決なのです。
だから自覚症状が乏しいからといって何もせずにこのまま黙って放置すれば知らず知らずの内に取り返しのつかない不可逆性の変化である動
脈硬化を引き起こしてしまうことは十分に理解しておく必要があります。死亡原因として、がんと血管病が世界的に大きな課題ですが、血管病
の場合は特にその後遺症が深刻なため、生き残っても大変な思いをしている人が多いわけです。働き盛りの男性に多発し、いきなり戦線離脱
することが多いので
社会的にも問題が大きいとされています。
従って、心筋梗塞など生活習慣病の引き金になる動脈硬化、そのリスクを高めるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の考え方をもとに
病気を予防する対策が全国に広がってきわけです。内臓の周囲に脂肪が過剰に蓄積していれば、血圧、血糖などの値が少し高めでも要注意
という分かりやすい診断基準も策定されるようになってきました。メタボリックシンドロームの概念を導入して防げる確度が高まるのは、国民病
といわれる生活習慣病。
糖尿病や心筋梗塞など罹患率が高い病気が数多く含まれています。

また世界的な流れとしても死因の中で最も多い心臓病につながる動脈硬化の予防が重視され、その実績を検討した結果、80年代末ごろから
原因は一つではなく、一人の患者が糖尿病、高脂血症など複数のリスクを持つ集積症候群の場合に発症しやすくなる、という実感が国際的に
も広まっていきました。こうした症状が四つ重なると危険であるということから米国などではかなり以前から「死の四重奏」という言葉で注意を促
しています。

さてメタボリックシンドロームの考え方は、まず内臓脂肪は蓄積すると、動脈硬化の危険因子である肥満や高血圧、高脂血症、高血糖などを発
症すると考えられています。その危険因子は、一つ一つは軽くても複数重なると動脈硬化になる確率が高まり、さらに心筋梗塞や脳卒中に結
びついていく、そうした状態をメタボリックシンドロームと呼んでいるわけです。だから大切なことは、血液中の中性脂肪や糖分の含量、血圧な
どがいずれもやや高め程度の
値であっても、このうち二つが該当すれば、相乗して血管を傷め不可逆的変化である動脈硬化を引き起こすことに
なるのです。

この恐ろしい動脈硬化を引き起こすもうひとつのルートは脂肪細胞が直接、分泌する「アディポネクチン」というホルモンに関係があります。脂
肪組織は単なる余ったエネルギーの貯蔵庫ではなく、内分泌臓器の役目も果たしていることが分かってきました。そこから出される「アディポネ
クチン」は動脈硬化を修復する善玉なのですが、脂肪細胞が肥満すると、分泌量が減って、つまり動脈硬化が進行するままになってしまうので
す。 いずれも過剰な内臓肥満が元凶になっているのです。
動脈硬化を放置して心筋梗塞などで倒れると、命を取り留めても、回復に時間がかかれば、老後の生活は大きく変わります。身体機能だけで
なく、経済面の負担も大きくなるわけです。また恐ろしいことに、生活習慣病は二十〜三十年たたなければ結果が分からないので、働き盛りの
間は大きな問題は起きなくても、定年退職後に収入が減ったころに発病し、医療費が増える可能性もあるわけです。 だから、火事と病気は消
火より火の用心が大切、火事は
消えても焼けた家は元には戻らないわけですから。

これまで生活習慣病の予防として、バランスのよい食生活や運動不足の解消が呼びかけられてきましたが、これまでは焦点が食べすぎや運動
不足といった生活習慣だったため、予防に取り組む動機付けとしては少々希薄で、
飽食の環境のなかで危険性の認識が薄いまま、軽視されてきた傾向にあります。長年の生活習慣を改めるには、医療現場の努力だけでなく、
改善に取り組む本人の自覚が必須なのです。
         お疲れ様です? ここらで一寸一服 コーヒーブレイク!     メタボリックシンドロームの予防には普段からの健康管理が第一です! 積極的に定期検診も心がけましょう!         

メタボリックシンドロームの呼び方もいろいろ変わっています。
シンドロームX、死の四重奏、内臓脂肪症候群、マルチプルリスク症候群などです。その他に少し難しい表現の
インスリン抵抗性症候群等もあります。
「症候群」と名がつくものには通常、定義(基準)がもうけられているものです。

メタボリックシンドロームの定義は?・・・米国、欧州、世界保健機構(WHO)で定められた定義があります
(2004年11月現在)。
その基準に上がっているのは次の5項目です。
1.中心性肥満:太い腹囲(高いBMI・内臓肥満・内臓脂肪)
2.高血圧:正常高血圧または高血圧(治療中も含む)
3.高血糖:血糖を下げるインスリンの効きが悪い
4.脂質異常:高中性脂肪血症
5.脂質異常:低いHDLコレステロール血症
この中で注目すべき点は総コレステロールが入っていない点です。
現在はメタボリックシンドロームですが、今後も名称は変わる可能性はあります。このうち死の四重奏は肥満+3高(高血圧・高血糖・高脂血
症)なので憶え易いですね。また内臓脂肪症候群という呼び名は、ある意味でこの
メタボリックシンドロームの本質をよく表しています。

【メタボリックシンドロームの診断基準】
(1)ウエスト周囲径(必須項目)   男性85センチ以上  女性90センチ以上
(2)以下のうち2項目が該当   血液中の中性脂肪が150mg/dlかHDL(善玉)コレステロールが40mg/dl未満 ・血圧が高め(上・13
0mmHg以上、下・85mmHg以上) ・空腹時の血糖値が高め(110mg/dl以上)

先ほどの、死の四重奏という言葉を耳にしたことはありますか? なんとも怖いネーミングなのですが、肥満+3高(高血圧・高血糖・高脂血症)
をあわせたものをこう呼びます。これら、一つ一つは自覚症状が乏しいのでなかなか重い病気とはみなされないのですが、これらを組み合わせ
るとメタボリックシンドロームという恐い病気となります。
ところで、メタボリックシンドロームの診断基準に対して、「人はそれぞれ身長、骨格に相違があるのに、へそ回りの計測だけで十把ひとからげ
に基準値が表示されていることに納得しずらいところもありますし「身長に関係のない
基準は不自然ではないか」という意見もあります。
その背景には、身長と体重をもとに指数を算出する「BMI(ボディー・マス・インデックス)」が、肥満度の判定方法として一般に知られているとい
う事情があるから?です。 
BMIは体格の肥満度を調べる方法で、BMI値が22だと病気にかかりにくい標準体重、25以上が肥満とされているのですが、一方、体重に対
する脂肪の占める割合を表すのが体脂肪率なので、BMI値が適正で、見た目は太っていなくても体脂肪率の高い人は、内臓に脂肪がついて
いる"隠れ肥満"であることが多いのです。
メタボリックシンドロームかどうかを診断するには、隠れている内臓脂肪に重点を置いた判定が必要となるわけです。診断の目的は勿論、動脈
硬化が引き起こす病気の予防で、動脈硬化の引き金になる肥満、高血圧、高脂血症、高血糖などは内臓脂肪の蓄積が原因だからなのです。

ところが、内臓脂肪を正確に手軽に知ることは大変難しいのですが、1983年から、X線で人体を輪切り画像にして見られるCT(コンピュータ
ー断層撮影法)で分析したところ、これまで肥満は皮下脂肪の蓄積と考えられていたのが、糖尿病などの症状が出る人は、むしろ皮下脂肪層
が薄く、内臓の周囲にたっぷり脂肪細胞がたまっている人が多かったのです。このような「内臓肥満」の人は、糖尿病、血液中の中性脂肪含量
が多い高脂血症、高血圧になりやすく、脳卒中、心筋梗塞につながる動脈硬化を引き起こすリスクが非常に高まることがわかってきました。従
って本来、腹部CT(コンピューター断層撮影法)を撮る必要があるわけですが、しかし、予防目的でCTを撮るのは健康保険の適用にもなら
ず、被ばく線量の問題など難しい問題もあるので、"予防"の最前線であるかかりつけ医、
保健所などで簡単に使える基準が求められていたわけです。
基準値となったウエスト周囲径は、腹部CTで測った内臓脂肪の断面積が100平方センチメートル程度の人のデータから割り出されたもので
す。この値を超すと、高脂血症や高血糖などの危険因子を複数、発症する人が多くなるのです。男性より女性の方が5センチ太いのは、同じウ
エストサイズでも女性の方が皮下脂肪が蓄積していることが多いことからです。しかし、がん等の診断と違って、メタボリックシンドロームを診断
する目的は動脈硬化の危険群を
選び出すことなので、基準値はあくまで目安を示したと考えるのが妥当でしょう。
これに加え、選択項目である「脂質」「血圧」「血糖」の三つのうち二つ以上が当てはまれば、メタボリックシンドロームと診断されるわけです。こ
の三つは定期健康診断で測定する数値なので、ウエストを測って要注意なら、健診
結果と組み合わせて誰もが簡単に確認できるわけです。

≪良い肥満 悪い肥満≫ ■体重あっても…皮下なら「問題なし」
「おなかが出てきたぞ」「太ったかな」と思っても、体の脂肪のつき方には、皮下脂肪型(洋ナシ型)と内臓脂肪型(リンゴ型)があります。メタボ
リックシンドロームの元凶である内臓肥満とは、皮下よりも、腸など内臓の周囲に蓄積した状態なのです。脂肪が内臓に接しているので肝臓の
門脈などから吸収され、脂質の代謝を乱しやすいのです。ウエスト周囲径が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上だと、この内臓脂肪
が過剰に蓄積されているか判断する目安になるわけです。

それでは、メタボリックシンドロームになるとどのような症状が起きるのでしょう。
まず、普通の人と較べて血液が固まり易くなり、血管が詰まる事によって起こる疾患の危険性が増します。具体的には・・・" 脳の血管が詰ま
る脳梗塞 " 心臓の冠状動脈が詰まる心筋梗塞です。大変に恐ろしいあまりかかりたくない疾患ばかりです。そしてメタボリックシンドロームに
なると、血液中で血糖を下げるインスリンの効きめを妨げる物質が増加しています。それに加えて" 血圧を上げる作用がある物質 " 血管に
作用する物質" 血液を固まり易くする作用がある物質の増加が起きてきます。
また見た目は同じ脂肪細胞でも内分泌の視点からは内臓脂肪は、皮下脂肪と較べて、これらの悪玉物質をより多く作っています。悪玉物質の
作用は一言で言えば" 糖尿病になり易く " 動脈硬化を促進し " 血液を詰まり易く、すなわち、諸悪の根源は内臓脂肪という事になりま
す。

治療法はさまざまありますが、ちょっとした肥満で陥るメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の、その予防のカギを握る生活習慣指導と
なると、運動、食事、それと一般的な生活のリズム、例えば、ストレスや夜更かしなどの生活指導、この三つが大きな柱になります。中でも3大
欲のひとつ、食欲に関する食生活の指導は栄養欠乏から過剰症へと時代が大きく変わってきたなかでは、そうした食生活改善での肥満解消
は、だからむしろ格段に難しくなったともいえるわけです。ただ闇雲に体重を減らしましょうだけではだめで、その人の生活習慣に合わせた方
法をやっていかなければ、そして長い目で見ないといけません。半年、一年かけても良くなればそれでいいわけです。これまでの栄養政策とい
うのは、人々をマス(集団)ととらえて地域住民など大勢の何万人を対象に何グラム、何カロリーなど必要な摂取量を一律に義務づける形にな
っていたことが多いのです。しかし、個人はもともと体質が大なり小なり違うわけですから、体の大きい人、小さい人、同じ年齢同じ性別でも個
人差が出てきます。その要因としてやはり遺伝素因があって、同じように食べていても太りやすい人もいるわけで、それぞれ個別に考え対処し
なければいけません。したがってまずは自分の健康は自分で守るという自覚をもたなければなりません。それにはまず、自分の老後を医療費
も含めてよく考えてみることです。そして、きちんとした食生活を子供に伝えているか、海外に食糧を依存している状況でいつまで飽食が続けら
れるか等を考えて将来を見通せれば、自覚は自ずと生まれるはずです。手始めには、自分の体重や血圧、一日当たりの食事量など簡単でも
いいから、まずは自分を分析してみてください。
その上で実行できるところから目標を立て、無理のない生活改善をしていくことが大切です。

ところで内臓脂肪のもとになる肥満は、食べ物からの摂取エネルギーと、運動で使う消費エネルギーのバランスが崩れて起こるわけです。食べ
る量は少なくなっても、出ていく消費量が少なければ、当然おなかに脂肪がたまります。もともと人体では、酵素などが働いてバランスを取るよ
うになっているのですが、その働きが人それぞれの体質によってかなり違っているのです。だから摂取量と消費量、肥満度、体質等をもろもろ
見極めながら、その人の栄養バランスを考える必要があるのです。また年齢とともに総摂取量も低下するものですが、その一方で、四十代を
境に中年以降は、食事摂取の栄養分などをエネルギーに換える基礎代謝も低下します。
さらに筋肉量も落ちてきて、摂取エネルギーを消費することも少なくなるので、一層肥満を助長し、動脈硬化の
危険因子を増やすことになるわけです。
さて万病の元になる内臓脂肪の蓄積ですが、内臓脂肪は日々の生活のための『普通預金』、皮下脂肪はいざというときの『定期預金』」とも考
えられます。 "普通預金"の内臓脂肪は、日ごろの食生活や運動不足などで比較的簡単にたまる一方、生活の改善次第で減らすことができる
のです。従って食べ過ぎを改め、食事内容も脂質の低い和食を増やすといった工夫が必要になってもきます。 また、内臓脂肪は、エネルギー
として消費されやすいのでウオーキングなどの運動を積極的に行うことが大切です。一日に必要な運動エネルギーは、摂取エネルギーの10−
15%といわれています。そして一日のエネルギー量は「体重1キログラム当たり25キロカロリーが目安」です。飽食社会の世の中、摂取エネ
ルギーと運動エネルギーとのバランスが取れていないから、肥満症になるわけです。最近の欧米の研究では、「一週間に1700キロカロリーの
運動で動脈硬化の退縮がみられた」という報告もあります。日本人なら、おおよそ毎日三十分のウオーキングで十分だとも言われています。た
だし、四日以上休むと効果がないとも言われています。

このような多種多様な生活習慣病を予防するには、一般の日常生活習慣において、あまり長続きしそうにない難しい事等は別として、どのよう
な点に注意したらいいのでしょうか?
アメリカなどではイルネス(病気)に対してウエルネス(健康)という言葉がよく用いられます。そして誰もが手軽に今からでも出来るという、その
ウエルネス運動としてよく言われていることにファイブエス(5S)運動と言うのがあります。つまりSUGER(砂糖)のS、 SALT(塩)のS、 SNACK
(間食)のS、 SMOKING(喫煙)のS、 SITTING(座りっぱなし・・運動不足)のS、 この"死を呼ぶ5つのS"を減らしましょうと言う運動です。
"1.2.3.運動"と言うこともよく言われています。即ち"1"は一駅手前でバスは降りなさい、"2"は2キロ以内は
歩きなさい、"3"は3階までは歩いて上りましょうという意味です。

さて・・・誰もが願う、家族に迷惑掛けず元気で長生きする為の健康管理には、このような色々と難しい事、嫌な事、煩雑な事も多いのです
が・・・あまりそうガチガチにばかり考える事もありません。特に70歳を過ぎる頃からの健康管理には特に食生活ヘの注意が大切で、高齢にな
れば食も細くなりがちな上、栄養不足(低栄養)にも陥りがちで、かえってそれが老化を加速させる事にもなりかねません。即ち栄養状態の指標
となる血清アルブミン(血中の主要たんぱく質)の低下に注意が必要で・・・生活習慣病の危険を乗り越えた70歳以上の方たちには、特にたん
ぱく質の栄養バランスが大切で、心身を共に元気に保つ為、例えば肉と魚は一対一の割合で摂るなど、肉類や油脂類を
上手に積極的に摂る必要等も大いにある事を忘れてはなりません。
日本人は、特に糖尿病になりやすい?・・・脂肪のエネルギーをむだにしないように、白人よりも体に中性脂肪をためやすい体質になっていま
す。それを「倹約遺伝子」といいますが、インスリンが過剰に分泌すると、膵臓の細胞が持ちこたえられなくなって、軽度の肥満でも容易に糖尿
病を発症してしまうケースが多いといわれています。日本人はもともと肥満に弱い民族なのです。栄養バランスも、これからは、摂取量だけでな
く消費の側にも目を向けて健康状態の評価、その人なりの食文化、ライフスタイル、つまりは人間そのものを見ていくことが非常に大事なことに
なります、でないと、適切な食事指導などできないことになるわけです。糖尿病は発症すると根本的治療法が無いため、一生の付き合いとな
り、食事療法でカロリー制限を守り、適正な運動を続け、必要なら薬を欠かさず服用するといった、終わりなき摂生の日々が一生続くことになる
わけです。"今の自分"ではなく、"これからの自分"のために、
良い食習慣を身につけることが大切なのです。

ところで最後になりますが、生活習慣病の予防で最も重要な部分、即ち個人の生活習慣というものは、もって生まれてきたものに加え、幼い時
からのさまざまな環境とそれに伴う膨大な体験から完成されたもので、その個人にとっては人生そのものです。従って人生は習慣であり、多か
れ少なかれ、半ば自動的に行われる行為の連続であり、
"しつけ"や"三つ子の魂百までも"はよくそれを表しています。従ってこれから何とか採り入れよう、実行しようとしている理想の生活習慣と現実
の生活習慣との隔たりがあまりにも大きいとストレスになることも多く、長続きしなくなる恐れもあり、総てを即座に実行する事が重要なのでは
なく一歩一歩徐々に慣れていく事がむしろ重要なことだと
言われています。

これがすべてではありません。十二分にご理解いただき誤解なきようお願いいたします。